新型コロナウイルスと医療法人の感染管理体制

2020年05月29日

 昨年末、中国から新型コロナウイルスの1例目がWHOに報告されて以来、未だ収束の兆しはありません。本邦でも1月中旬に最初の報告がなされ、その後の広がりは皆様がご存知のとおりです。この数カ月で医療機関だけでなく、生活のすべてが大きく変化しました。私どもは、地域を守る医療機関として、どのように対応をすることが適切かを常に考えてきました。今回はこれまでの法人内の対応について、その一端をお伝えしたいと思います。

 中国全土に感染が広まっていた2月、日本ではクルーズ船の問題が終日ニュースで報道されていました。まだ日本人の多くは対岸の火事と思っていた時期でしたが、私どもはじめ医療機関にはしだいに緊張感が走りはじめていました。私どもには東京・大阪に外来だけでなく、1000人を超える在宅患者がいます。その多くはご高齢で、様々な病気を抱えた方ばかりです。このような場面で問題になるのは、医療機関がパニックになり、適切な医療が提供できなくなることにあります。我々がすべきことは、患者さんを守るだけでなく、職員の意識を高め、適切な医療を継続することにあります。まだ内部でも意見が定まっていない時期ではありましたが、今後の流行に備え、2月21日に法人指針Vol.1として、『自らが感染しない』、『感染拡大を防ぐために』をスローガンにセルフチェック、手指消毒の励行など業務中だけでなく、生活全般にも注意を促しました。法人内では、今後の流行に備え、感染対策委員会を立ち上げ、速やかに意思決定ができるようクラウド上で情報共有を行い、社会情勢や最新エビデンスを加味しながら、法人指針を発出していきました。その後、コロナはあっという間に世界に広がっていきました。目まぐるしく変わる流行状況や政府方針などに敏感にアンテナを張りながら、業務上の留意事項、生活上の注意、発熱患者への対応、自身が体調を崩した場合など、おおむね2週おきに指針のアップデートを行いました。全国的に流行し、4月の緊急事態宣言からさかのぼること約1か月前の3月11日、院内感染を防ぐため各拠点間や外来および在宅診療部の職員を固定するなど、さらに厳格な感染管理を行うことにしました。当初、このような決定が過剰であるといった内部の意見もありましたが、職員のほとんどは不便を強いているにも関わらず非常に協力的でした。

 

2020年4月法人指針

  1. 院内感染防止の徹底
  2. 在宅再入院ゼロへ
  3. オンライン診療の拡充
  4. 公的機関へのコロナ医療支援

 

 そして、4月からの2カ月で徐々に感染報告が減少し、ご存知のとおり先日の宣言解除に至りました。宣言解除に伴い、私どももおおむね通常通りの診療体制に戻りつつあります。この数カ月、世の中の流れをいち早くつかみ、対応できたのは職員個々の意識が高まり、速やかに実行してくれたおかけです。そして、これからは自主的に迅速な対応が可能になるよう、警戒レベルに応じた診療体制や生活指針の目安を作成しました。

 

警戒レベル毎の体制.pdfcolumn_47.jpg

 

しかしながら、コロナとの闘いはまだ始まったばかりだと感じています。私たちは地域を守る医療機関として、院内感染予防策の継続、在宅患者の再入院ゼロ、オンライン診療の拡充、公的機関での医療支援、秋冬に向けた再流行に対する準備など、気を緩めることなく、病める人に手を差し伸べる努力を惜しみなく行っていきたいと考えております。

 

新型コロナウイルス感染対策委員会

委員長 西原崇創

 

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