雑誌編集幹事:プライマリ・ケア医が知っておくべき心不全診療

2020年06月01日

南山堂「治療」の2020年6月号で、特集「プライマリ・ケア医が知っておくべき心不全診療」の編集幹事を務めさせていただきました。高齢化に伴い心不全患者数は急増しており、患者の20~40%が1年以内に再入院するとされています。少しでも心不全の悪化を防ぎ、生活の質を保つためには、具合が悪くなってから病院へ行くのではなく、地域のかかりつけ医で心不全の予防を意識した治療・管理を行うことが重要であると考えます。しかし、心不全には様々な背景があり、一人として同じ病状の方はいないので、患者家族だけでなく、医師や看護師も不安を抱えながら対応しているのが現状です。

本特集では、本邦の様々シーンで多くの心不全患者の診療を行っているスペシャリストの先生方とともに、地域で心不全患者を診ているかかりつけ医の先生方や看護師さんに向けて、心不全診療における診断、検査、治療、管理などを分かりやすく解説しています。

まず、冒頭の『座談会』は、「これから5年の心不全診療の課題と展望」と題して、大阪大学循環器内科主任教授坂田泰史先生、かわぐち心臓呼吸器病院副院長佐藤直樹先生とともに、これからの心不全医療について白熱した議論を展開しています。校正段階で各先生方から「この座談会、世の中に出して大丈夫でしょうか?」という話があがるほどの内容になっています。次に『診断』では、症状や身体所見、心電図から心エコー検査まで。また初診患者が心不全かどうかをどのように見極めるかなどが専門医の視点から述べられています。『治療』では、最も多く使われながら、簡単なようで難しい、利尿剤を「DOSE」を意識した使い方について種類別に整理していただきました。β遮断薬はどのような患者さんに、どの程度、どうやってといったエビデンスが整い始めています。新しい治療薬であるSGLT2やイバブラジン、ARNIなども分かりやすく解説いただいています。また、心不全という症候群への治療薬について、「症状緩和」と「予後改善」、何を目的に使用しているか、治療薬選択の大事なポイントについて表を用いて記載されています。また、非専門の先生方に心不全治療における「悩み」は何かと聞くと、どこまで見て良いのか、どこから専門の先生にコンサルトすれば良いか、という声を多く聞きます。Pick Upでは、国立循環器病研究センター心不全科の泉 知里先生からこのような声に「ここまでお願いしたい!」とお答えいただき、その中で心不全診療でどうしても忘れがちな点にも触れていただきました。『非薬物治療』では、新しいデバイス治療について解説いただきました。心不全患者のほとんどは高齢者ですから、心臓だけを考えるのではなく、様々な背景を加味しなければいけません。それらを踏まえ、治療適応について述べていただきました。最後に、心不全の『管理』についてです。ここでは、食事指導、運動指導、番外編とした生活指導について、そして地域のかかりつけ医が主体となってくる在宅・緩和ケアについても、ページを割いて、記載しています。

本特集では、プライマリ・ケア医の先生方に知っていただきたい心不全診療について、基礎から応用まで、最新の知見を交えてご執筆いただき、かなり読み応えのある内容に仕上がっています。お忙しい中ご執筆いただきました先生方に、心より感謝申し上げます。

総論

特別座談会:これから5年の心不全診療の課題と展望            弓野 大, 佐藤 直樹, 坂田 泰史

慢性心不全のステージ分類:診断,治療,管理の総論                    猪又 孝元

診断

まず心不全の基礎疾患を考える                               山口 修

心不全の症状と身体所見                                 白石 泰之

検査結果をどうみるか:心電図                              大島 一太

検査結果をどうみるか:BNP, NT-proBNP                         奥村 貴裕

検査結果をどうみるか:心エコー                            鶴田 ひかる

初診患者が心不全かどうかをどうやって見極めるのか?                   佐藤 直樹

再入院・突然死はどのような患者がする?                         坂田 泰彦 他

コラム:post CORONAのオンライン心不全診療の可能性                    弓野 大

治療:薬物治療

LVEFで分けた慢性心不全治療の考え方                           大西 勝也

利尿剤のDOSEを意識した正しい使い方:ループとサイアザイド                末永 祐哉

利尿薬のDOSEを意識した正しい使い方:ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬          梶本 克也

利尿剤のDOSEを意識した正しい使い方:トルバプタン                    松川 龍一

古き良きジゴキシンを導入する症例                             志賀 剛

β遮断薬の適応症例, 至適用量                               世良 英子

SGLT2阻害薬の適応となる患者                              佐野 元昭

新しい心不全治療薬の可能性:イバブラジンと"ARNI"                    波多野 将

ガイドラインに書けない高齢者心不全治療薬の使いかた                   秋田 敬太郎 他

症状緩和(目に見える)と予後改善(目に見えない)の使い分け                 志賀 剛

Pick Up

非専門医の先生にここまでお願いしたい心不全の外来診療                    泉 知里

心不全診療で手を抜いてしまいがちな5つのこと                      加藤 真帆人

治療:非薬物治療

高齢者のデバイス治療の適応                                今村 輝彦

高齢者のSHDカテーテル治療の適応                             竜﨑 俊亘 他

心不全患者の管理方法

食事指導の新たな考え方                                   宮澤 靖

自宅でできる運動指導                                    鈴木 豪

生活指導 番外編                                     肥後 太基

緩和ケア:意思決定支援                                  坂下 明大

緩和ケア:症状緩和                                    大石 醒悟

緩和ケア:在宅医療                                    小出 雅雄

再入院をさせない社会資源サービスの使いかた                        齋藤 慶子

 

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