Clinical Question:在宅HFNCについて 

YUMINO education program2025年10月01日

在宅で使用される酸素療法には、HOT(在宅酸素療法)、NPPV(非侵襲的陽圧換気)、HFNC(高流量鼻カニュラ)があり、それぞれに適応が定められています。本日は在宅HFNCについてです。

■適応

HFNCNHFとも呼ばれる)は、2022年に在宅診療報酬の対象となりました。現時点での保険適応疾患はCOPDのみで、HOTを使用してもPaCO₂4555 mmHgの高炭酸ガス血症を認める、夜間の低換気による低酸素血症、呼吸困難や喀痰排出困難などの自覚症状がある等の条件を満たした場合に使用可能となります。

 

■HFNCの役割

  • 急性期:気管挿管の回避
  • 慢性期:COPDの増悪予防、QOL向上

■COPDの増悪予防

在宅HFNCの慢性期効果を検討した報告では、LTOTLong-term oxygen therapy)群と比較してHFNC群の方が増悪リスクが有意に少なかったとされています。ただし、総死亡率の低下効果は示されなかったという点にも言及されていました。
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■QOLの向上

在宅HFNCを使用しているCOPD患者を対象とした研究では、SGRQSt. George's Respiratory Questionnaire)スコアによってQOLを評価した結果、HFNC群は在宅酸素療法群よりも良好なQOLを示しました。

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■急性期・慢性期に共通して期待される効果

  1. 換気補助(PEEP効果と死腔洗い流し)
    1-3 cmH₂O
    程度のPEEPが得られるとされ、鼻腔・気管内の死腔を洗い流すことで効率的にCO₂を排出し、日中PaCO₂の低下につながります。
  2. 安定したFiO₂21100%)
    低流量システム(HOTやベンチュリーマスク)では換気量に見合う酸素が供給されず、外気が混入するため酸素濃度が変動しやすく、CO₂ナルコーシスのリスクがあります。HFNCでは一定した酸素濃度の供給が可能です。
  3. 加温・加湿による気道浄化
    加温・加湿により繊毛機能が維持され、気道クリアランスが改善。痰の排出が促されます。水道水でも使用可能な加湿器もありますが、精製水に比べてカルキが多いため定期的な清掃が必要です。


■臨床現場での課題・困難症例

  • 装着感:カニュラより負担が大きいと感じる患者もいますが、NPPVを経験した患者では「まだ楽」との声もあります。結露による不快感を訴える場合もあり、どの点を不快と感じるかの聞き取りが重要です。
  • 適応外疾患:現行制度では間質性肺炎に伴う型呼吸不全は適応外。症状緩和目的で悩ましいケースがあり、介護環境や家族支援体制も導入可否を左右します。

■まとめ

在宅HFNCは、COPD患者を対象に増悪予防とQOL向上が示され、急性期では挿管回避にも寄与します。一方で、適応疾患が限定されていること、装着感や結露など患者の受容性、介護環境といった現場課題も存在します。

 


ゆみのハートクリニック渋谷
渡瀬 麻友子

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