循環器×在宅医療×リハビリテーション ~3つの専門医で地域を支える~
今回私は、9月に開催された日本循環器学会関東甲信越地方会のダイバーシティ・フォーラムで、『循環器内科医のリアルライフ〜ライフ・ワーク・マネーの観点から〜 』についてお話させていただく機会をいただきました。自分の医師人生について、このような大舞台で話すというのはとても緊張しましたが、少しでも在宅医療に興味を持ってもらえたらと思い、お話しました。
循環器内科医の働き方の一つとして在宅医になったこと、様々な分野を勉強するに至った経緯についてご紹介させていただきます。
■循環器内科医として
私は琉球大学を卒業後、東京医科歯科大学での内科研修を経て、循環器内科医となり、約7年間病棟に勤務し、心臓カテーテル治療などの急性期医療に従事しました。高齢患者さんが多く、やっと心疾患が良くなったころには寝たきり、認知症の進行などで、自宅へ退院できず、転院していく患者さんも多く、地域で心不全を診る在宅医療が必要だと感じました。
■在宅医を始めた頃
2012年に在宅診療のクリニックへ転職。退院してきた患者さんたちが、地域で医療や介護に支えられ、穏やかな日常を取り戻す姿に、在宅医療の価値を実感しました。一方、始めたばかりの頃は、医療・介護・障害福祉制度とは?地域包括システムとは?というレベルで、わからないことがいっぱいありました。また、在宅医療では、主治医として専門外のことも患者さんの様々な症状に対処する必要があり、特に褥瘡の処置や癌の緩和ケアについての知識は重要で、必死に勉強しました。
■リハビリテーション医学の世界へ
徐々に診療も板についてきたころ、患者さんとの会話で「退院できて、何かやりたいことは無いですか?」と聞いても、「特にないね。」「迷惑をかけたくない。」と言う方が多く、身体が自由に動かなくなると、何かやりたいという思いも薄れてしまうのかな?と残念に感じました。Aさんも寝たきり状態にあり『特にない。余計なことはせんでいい。』というタイプの方でしたが、ある日リハビリ担当者が、ご家族と協力し車椅子で外に連れ出しました。

すると、外の景色を見て笑顔になったそうです。別の日に診療で感想を聞くと、嬉しそうな表情で「次はここにいきたい」という希望を口にされました。
在宅医療は終末医療のイメージが強いですが、生活と人生に寄り添う医療です。生活者である患者さんの意欲と希望を回復させる、リハビリテーションについて勉強したいと思い、2014年に回復期リハビリテーション病院での勤務を開始しました。
■リハビリテーション専門医として
リハビリテーション病棟での医師の役割は様々ありますが、疾患の内科的管理を行い、リハビリテーションを行える健康状態を維持するところが重要な役割で、内科・循環器内科の知識をいかしながら、リハビリテーションを学ぶことができました。脳卒中や、脊髄損傷、骨折など、様々な疾患のリハビリを経験できたことは、現在の在宅医のとしてのスキルに非常に役立っています。
■在宅医療専門医として
2019年4月、医療法人社団ゆみのに入職。
循環器専門医として心不全患者の在宅支援、在宅専門医として地域の多職種と連携して、様々な疾患を持つ患者さんへ医療を提供しています。また、リハビリ専門医として、訪問リハスタッフと一緒に、患者さんが希望を持って在宅療養を継続できるよう支援しています。
■新たなChallenge
2025年4月ゆみのハートクリニックは在宅医療連合学会専門医プログラムの認定施設になりました。これまで当院が実践してきた在宅心不全管理のノウハウを、地域で心不全を見ていきたいと考えている先生たちに伝え、後進の先生を育てていきたいと思っています。
■ライフ・ワーク・マネー
現在は週4日勤務をしています。休日は書類仕事や学会準備をすることもありますが、趣味の旅行に行くこともあり、気分転換ができているので、比較的ワークライフバランスがとれていると思います。将来に向けた貯蓄は必要ですが、当面の収入には不足は感じていません。

医師として「在宅」というフィールドで深く患者さんや多職種のスタッフと関わりながら、学びを続ける今の生活に大きなやりがいと幸福を感じています。今後も患者さん一人ひとりの希望を支える医療を提供していきたいと思っています。
ゆみのハートクリニック
吉本 明子



