Clinical Question:褥瘡治療について 局所陰圧閉鎖療法とは
褥瘡の機序とリスク因子
褥瘡は骨と接地面による皮膚の圧迫→局所的な虚血→皮膚障害→褥瘡発生が発生機序となります。うっ血性心不全や骨盤骨折、脊髄損傷、慢性閉塞性肺疾患などが特に注意すべき危険因子となっており、自分で体位変換ができない、栄養状態が悪い、浮腫が強い、汗や排泄物などで皮膚がふやけるなどもリスクファクターとして挙げられています。
局所陰圧閉鎖療法:NPWT(Negative Pressure Wound Therapy)
創部を密封し、陰圧を負荷することで創傷治癒を促す治療法です。創傷に合わせたフォームをセッティングして、上から密閉してから機械につなぐことで陰圧をかけていきます。
陰圧により、創縁の引き寄せや創部の汚染防止・保護、浸出液や老廃物の除去、浮腫の軽減、血管新生の促進、細胞増殖、肉芽組織の促進の効果により創傷の治癒を促進させる治療法です。
2020年6月から在宅医療でも保険適応となっており、時にSNAP陰圧閉鎖療法に関しては手軽に使用することができ、外来通院や在宅医療でも実施可能なデバイスです。こちらは電源も不要で、カートリッジがあれば陰圧を掛けることができます。カートリッジは19,800円と高価ではありますが、保険適応のため適宜1-3割負担となります。浸出液が多い場合にはカートリッジの交換が必要となります。局所陰圧閉鎖処置用材料は処置開始日より3週間を標準として算定ができ、特に必要と認められる場合のみ4週間を限度として算定可能となっています。
実際の使用例
慢性心不全の患者様が、左踵の褥瘡に対して近医の形成外科で加療されていましたが、認知機能低下、ADL低下により通院困難となった為に、当院に紹介となりました。ほぼ寝たきりの方で、褥瘡部の治療は毎日ご家族で実施されていましたが、3か月間ゲーベンクリーム塗布を行うも、当院介入開始した際には創部に不良肉芽が増生しており治癒していない状態でした。
介入直後↓
初診後1か月同様の治療を行っても状態に変化がなかったため、創傷治癒遅延と判断し、不良肉芽のデブリードマン後にSNAP®を用いて局所陰圧閉鎖療法を開始しています。
デブリードマン実施前↓
デブリ―ドマン実施後↓
SNAP®装着後↓
【装着後の治療経過】
装着後1週間:不良肉芽が減少し良性肉芽が増殖し始める。
装着後2週間:さらに良性肉芽が増殖。
装着後3週間:創部も徐々に縮小し始める。
装着後4週間:不良肉芽はほぼ認めず、創部の縮小してきたため終了。
その後も処置を継続し療開始して9週目にほぼ完治となった。
難しかった点・今後の課題
踵のエアリークに対してパーミロールを調整しながら実施する必要がありました。今回はご家族様にご対応いただくことで治療が実施できましたが、リーク発生時の対応については家族の介護力や理解力、訪問看護師さんのご協力が必須でした。
※写真は患者さんの許可を得て掲載しております。
のぞみハートクリニック
眞野 翔
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