簡易検査よりPSGで呼吸イベントが半減した症例
70歳台 男性 身長:170㎝ 体重:73kg BMI:25.3 ESS:7
人間ドックで簡易検査を施行したところREI=40.5/時間(3%ODI=56.9/時間)の結果で、精査目的に当院を紹介され、診断PSGを行いました。
簡易検査ではそのままCPAPが導入できるほどの重症度でしたが、PSGでは全く異なる結果でした。あまり乖離するはずのない3%ODIが、簡易検査で56.9回/時間、PSGでは半分の26.1回/時間でした。SpO2のトレンドでは、通常のOSAと異なり、93%の低いSpO2のベース値に呼吸イベント出現時のみベースより上昇したSpO2値が示されています。これは呼吸イベントに伴う覚醒反応で過換気となったときのみ、SpO2が97%まで上昇し、入眠すると3%の低下を示すも、気流振幅の低下を伴わないため、呼吸イベントとは判定されないことになります。また心拍変動(HR)のトレンドでは、記録開始から2時間はやや変動幅が大きくなっています。無呼吸による変動ではなく、呼吸イベントのない深睡眠でも変動をみとめています。
判定された呼吸イベントは、典型的な閉塞性低呼吸とは異なり、呼吸の揺らぎとも思われる気流振幅の変化に、desaturationを伴うときのみ判定されています。
flow limitation もはっきりしませんし、呼吸努力の位相もはっきりしていません。いびきも持続時間が短く、スピーカーで確認すると呼吸音と大差のないものでした。おそらく閉塞の要因は少ないと思われます。このような症例が簡易検査結果でCPAPを導入された場合、重症例として圧設定が高かったり、圧上昇の早いCPAP機器だったりすると、おそらくCPAP不適応となる可能性があります。やはりPSGでの精査が必要となります。
記録開始から2時間までの心拍変動(変動があるも不整脈とは言えず)
後半の心拍変動(変動は認めず) HRの変動スケールは全く同じです。
心拍変動は呼吸イベントに伴う覚醒反応時に急激に上昇するため、トレンドの変動幅が大きくなります。この症例では、安定呼吸時で差が見られました。
ゆみのハートクリニック
川名 ふさ江