簡易検査よりPSGで重症度が半減した症例の原因を調べる
40歳台 男性 身長:175㎝ 体重:71.1 kg BMI:23.2 ESS:17点
心筋梗塞と糖尿病の既往歴があり、入院中に測定したSpO2が87%と低いことを看護師から指摘されたことで無呼吸が気になり、受診されました。
日中過眠や口渇感の自覚症状があるそうです。
簡易検査を施行したところ、REI=34.7 最低SpO2:80%の結果で、診断PSGを行いました。
結果はAHI=17.5回/時間と簡易検査時より呼吸イベントは半減する結果となりました。
在宅の簡易検査と入院PSGの乖離はよく経験することですが、多くの場合簡易検査よりPSGのほうが呼吸イベントは多く判定されます。
しかし逆の場合は、入院PSGで側臥位が多かった、在宅では飲酒して検査したなどの要因が考えられます。
しかしこの症例は、入院PSGの大半が仰臥位であり、アルコールは全く飲まない方でした。
簡易検査結果 トレンド
1時間ごとの酸素飽和度と呼吸イベントの圧縮波形
簡易検査結果からは、やはり重症の無呼吸があったことがわかりました。
それではなぜPSGでは軽症化したのでしょうか?まず考えられるのは、体幹は仰臥位でも、頭位を傾けるだけで呼吸イベントが抑制される症例があることです。
PSGのビデオ画像を改めて確認すると、1部は首を傾けていましたが、大半は頭位も正面を向けており、それでも呼吸イベントは抑制されていました。
次に考えられる点として、酸素飽和度のアーチファクトの可能性です。
簡易検査では、体動のアーチファクトを表に出さないため、アーチファクト部分のみ移動平均時間を長くしています。
それがあたかも呼吸イベントによるdesaturationと認識されてしまうことがあります。
上の図はPSGと簡易検査機器を同時に装着して比較しています。
上段が簡易検査のSpoO2トレンド、下段がPSGトレンドで、矢印部分のPSG波形がPSGではゼロを表示していたことがわかります。
しかし簡易検査では、ゼロを出さないように移動平均を長くして、中途半端な、あたかも呼吸イベントに伴うdesaturationのように見えています。