Clinical Question:免疫チェックポイント阻害薬によるirAE

YUMINO education program2021年10月15日

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図:免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(文献1より)

 

免疫チェックポイント阻害薬をはじめとしたがん免疫療法は、抗腫瘍免疫を活性化してがんを攻撃する治療法ですが、一方で自己免疫の賦活化によると考えられる免疫関連の有害事象(immune-related adverse event:irAE)の発生が問題となっています。免疫チェックポイント阻害薬によるirAEは多岐にわたり1)、出現時期も予測困難で、投与終了後も慎重に観察する必要があります(図)。

なかでも、心臓irAEの発生率は0.27~1.14%程度2)で、比較的まれだと考えられていますが、無症候性の心筋トロポニンT上昇から心原性の突然死まで、症候は非特異的で、重症化する可能性があります。免疫チェックポイント阻害薬投与から心臓irAE発症までの期間は概ね3ヵ月以内とされていますが、なかには初回投与から1年を超えてから発症したという報告もあり、発症は用量非依存性と考えられています。

心臓irAEが疑われた際には、免疫療法を完全に中止して、メチルプレドニゾロンのパルス療法(1g/日を3~5日間)を行うことで、心臓irAEの発生頻度を抑制することが示唆されています。また、ステロイド治療で24時間以内に改善がみられなければ、抗胸腺細胞グロブリンやインフリキシマブの追加も考慮してよいとされています3)。その他、新規免疫抑制薬であるミコフェノール酸モフェチルやCTLA-4アゴニスト、抗CD52モノクローナル抗体や血漿交換などの方法もありますが、いずれも症例報告に限られています4)

 

ゆみのハートクリニック 

田中宏和

 

参考文献

1. Sandra MH, et al. Immune Checkpoint Inhibitors and Immune-Related Adverse Renal Events. Kidney Int Rep. 2020; 5: 1139-1148.

2. Jiun-Ruey H, et al. Cardiovascular toxicities associated with immune checkpoint inhibitors Cardiovascular Research 2019; 115: 854-868.

3. 免疫療法関連毒性の管理.NCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン(https://www2.tri-kobe.org/nccn/guideline/supportive_care/japanese/immunotherapy.pdf)

4. Timothy EG, et al. Case 30-2019: A 65-Year-Old Woman with Lung Cancer and Chest Pain. N Engl J Med 2019; 381: 1268-1277.

 

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