BMI=44.9の脳波に混入した心電図波形

2025年05月02日

症例

30歳台  身長:184㎝ 体重:152.1kg BMI44.9 ESS:13 健診にて高血圧を指摘され頭痛の自覚もあり来院されました

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いびきの自覚はあるが、無呼吸があるかは不明とのこと、簡易検査を施行したところ、REI=17.4回/時間、最低値SpO2=85%でした。診断PSGを行ったところ、AHI=64.8回/時間と重症の無呼吸がありました。ただ高度肥満がありましたが、酸素飽和度低下は極端ではなく、最低値は80%でした。体位依存性もあり、側臥位では持続的な酸素飽和度低下(92%前後)がみられ、肥満低換気の病態も示唆されます。そしてこの高度肥満症例の脳波波形は、判定困難極まりないものでした。 




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これは記録開始時に患者校正を行っているところです。閉眼を指示していますが、脳波波形は高電位の心電図R波で全く判読できません。 

SAS患者は肥満症例が多く、脳波に心電図の混入は避けられないものですね。なぜ肥満症例に心電図混入が多いのでしょうか?それは肥満とともに心電図はhigh voltageになり、また首が太くなることで、より脳波に心電図が波及しやすくなるからです。生体電位として心電図はmV単位の大きさですが、脳波はuV単位ですから、少なくとも100倍は大きさが異なっています。したがって脳波の増幅器感度では、心電図の混入は避けられないことになります。そして上記の脳波混入した心電図の極性を見てください。左側はRはが上向き、右側はR波が下向きになっています。したがってリファレンスを両耳朶連結にすれば、R波が相殺されることになります。最近は、解析ソフトに心電図フィルターが装備されていますので、この症例にも心電図フィルターを使ってみましたが・・・・ 




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心電図フィルターをかけた状態の脳波です。確かにR波は抑制されていますが、T波が残存しているようです。おそらく脳波信号の電位が低いため、心電図がより目立っている、つまりSN比の問題なのでしょう。もしα波の電位が高ければ、心電図ノイズを抑えてα波を読み取ることができたと思われます。 

このようにα波の出にくい人は10人に1人はいるといわれ、入眠判定が非常に困難です。まずはベースの脳波にθ波が混在し、眼球運動がサイン波様(SEM:slow eye movement)になったら入眠と判定します。でもこのT波の混在は、θ波の出現もわかりにくくしていますね。AASMのルール本に書かれていますが、α波の出にくい症例は、入眠判定が遅れる可能性があるとされています。 




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このように高振幅のK複合や睡眠紡錘波なども見られるようになると、混在している心電図のT波もほとんど気にならなくなります。 




ゆみのハートクリニック 川名 ふさ江

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