Clinical Question:末期認知症の方針決定で考えるべきこと

YUMINO education program2022年08月05日

高度認知症の診療においては予測される予後と起こりうる合併症を認識、情報共有を行い、ご本人(ご家族)の意向に沿った治療・ケアのゴールを話し合い、それを基に方針を決定することが望ましい。

 

図1. 高度認知症の自然歴

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図2. 高度認知症の予後

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◆意思決定支援

認知症患者のケアにACPは基本であり、代理意思決定者に予後予測と起こりうる経過について説明が必要。

事前指示書ADのある認知症患者は、ない患者に比べて緩和ケアのアウトカム(経管栄養の減少、終末期の入院の減少、ホスピスへの登録の増加など)が良好( J Am Geriatr Soc 2010; 58: 2284-91. )。

 

◆食事

末期認知症であれば経口摂取は難しい。

経管栄養としても2009年のコクランレビューで生存期間、QOL、栄養状態、誤嚥予防には無効(Cochrane Database Syst Rev 2009;2009:CD007209)。

生存期間をoutcomeにした研究では生命予後は変えないと結果が出ている(J Am Geriatr Soc 2012:1918-21)。

経管栄養を行った方が褥瘡の発症率が高く、既存の褥瘡の治癒頻度が低い(Arch Intern Med 2012;172:697-701)。

 

◆感染症

末期認知症患者において12ヶ月の間で2/3が何らかの感染症にかかっている。

肺炎にかかった人は生命予後は6ヶ月(N Engl J Med . 2009;361:1529-38)。

合併症があるようなら死亡率は50%程度である(JAMA . 2000;284:47-52)。

CASCADE研究では肺炎に対して抗菌薬投与をすると273日程度生存すると言われているが、不快感の程度は増すと報告されている。

死亡率については抗菌薬の有無で変わらない。

 

◆入院

感染症は最も多い入院理由である。しかし、入院の75%は医学的に不要であるか、患者の希望にそぐわないため(股関節骨折の治療や緩和ケアが利用できない場合など、まれなケースを除いて)回避可能である( J Am Geriatr Soc 2012; 60: 905-9. )。

不本意で不必要な入院を減らすには、ACPが重要( Arch Intern Med 1997; 157: 327-32. )。

 

◆薬

進行性認知症において、中止すべき薬剤がある(J Am Geriatr Soc 2008:1306-11)。

コリンエステラーゼ阻害薬(アリセプト)36%、メマンチン(メマリー)25%、スタチン22%

 

ゆみのハートクリニック

芹澤直紀

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