急性・慢性心不全診療心不全ガイドライン:vol.3 疫学・原因・予後

2018年05月30日

今回は、心不全の疫学、原因、予後について概説します。

  • 日本における死因別死亡総数の順位で、心疾患による死亡は癌に次ぎ2番目で、心疾患の中では心不全による死亡数が最も多い現状です。
  • 日本の心不全の入院数は、2015年度の年間23万8840人(JROAD2015)で、年に1万人以上の割合で増加していると報告されています。
  • 日本全体における心不全患者の総数は、このままでいくと2020年には120万人に達すると推定されています。
  • 日本での心不全の大規模レジストリー研究(JCARE-CARD, CHART-1, CHART-2)では、登録患者は高齢で、左室収縮能が保たれている心不全(HFpEF)が半数以上になっています。またHFpEFの生命予後は、左室収縮能が低下している心不全(HFrEF)と大きな差はありませんでした。
  • 日本における調査結果から、入院した心不全患者の原因疾患は、多いものから1)虚血性心疾患,2)高血圧3)弁膜症でした。
  • 日本の心不全患者全体の院内死亡率は約8%で(JROAD2015)、1年死亡率(全死亡)は7.3%(JCARE-CARD, CHART-1)、なお心不全増悪による再入院率は、退院後6か月で27%、1年後は35%(JCARE-CARD)でした。
  • 日本での急性心不全に関する疫学研究(HIJC-HF, JCARE-CARD, ATTEND)では、登録患者は高齢で、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心房細動の合併が多いと報告されています。
  • 日本での急性心不全の原因は、虚血性心疾患がどの調査でも30%をこえ、最多でしたが、原因を占める割合をみると、欧米と比べ、それでも虚血性心疾患が少なく、高血圧性心疾患が多いという特徴があります。

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心不全患者の生命予後や再入院率は、その患者さんの病態、治療や管理方法によって大きく変わります。性別、年齢、症状、基礎疾患や合併疾患など、予後を左右する因子が多く存在するからです。たとえば、急性心不全で入院した患者の院内死亡率を調べた本邦の多施設観察研究から、年齢で院内死亡率を調査したところ、64歳以内は3%であるものの、85歳以上では13%と、年齢だけでも差があることが分かります(文献2)。このように、心不全患者の予後を考えるときには、多角的なアセスメントも必要となります。 欧米ではすでに患者データを入力することにより予後予測が分かるいくつかのスコアがあります(以下に列記)。今後も欧米と日本では人種や医療体制の違いもあり、本邦での同様の予後予測スコアの報告が待たれます。

  • EFFECT (Enhanced Feedback for Effective Cardiac Treatment), 2003
  • SHFM (Seattle Heart Failure Model), 2006
  • HFSS (Heart Failure Survival Score), 1997
  • PACE Risk Score (PAD, Age, Creatinine, EF), 2012
  • SHOCKED Risk Score (>75 years , Heart Failure-NYHA, Out of rhythm, COPD, Kidney disease, EF, DM), 2012

 

参考文献

  • 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
  • Mizuno M, et al. Clinical profile, management, and mortality in very-elderly patients hospitalized with acute decompensated heart failure: An analysis from the ATTEND registry. Eur J Intern Med. 2016;27:80-5.

弓野 大

 

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