Clinical Question:COVID19罹患後の間質性肺病変(Interstitial Lung Disease: ILD)

YUMINO education program2021年11月19日

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、びまん性の肺病変を伴い、わが国では酸素需要のない例を中等症I、酸素需要のある例を中等症II、人工呼吸管理、ECMOまたはそれに準ずる呼吸管理を必要とする例を重症と分類し、その肺障害は、ウイルスによる細胞障害、炎症性サイトカインの過剰応答、人工呼吸管理などによる複合的な要因によるものと考えられている。

 東京において先の第5波では、多数の有症候性の感染者が、医療逼迫のため自宅療養を余儀なくされた。当院ではこのような症例が、療養解除後の息切れ、咳、倦怠感などを訴え多数来院された。ほとんどの症例は、急性期に胸部レントゲンを施行されず、酸素飽和度のみで「軽症」とされ自宅療養となっていたが、当院来院後のレントゲンでは、ほぼすべての症例でびまん性のすりガラス影、浸潤影を認め、少なくとも中等症I以上の状態であったと考えられた。このことから、第5波における「軽症」の自宅療養患者の相当数が、実際は中等症以上であったことが推察された。

 Natureの総説では、COVID-19罹患後1か月から3か月程度の残存症状をpost acute COVID-19 syndromeと表現し、いわゆるコロナ後遺症として、全身臓器の障害について概説している。肺病変に関しては、上述のような咳嗽、息切れ、低酸素血症の遷延などが挙げられ、胸部画像所見では、びまん性肺病変の遺残を認めるとされている。Lancetに報告された武漢における罹患後6か月、1年のコホートでは、高流量酸素、人工呼吸管理となった中等症IIから重症にあたる症例において、CT上のすりガラス影の残存と肺拡散能の低下が有意に遷延するとの報告があり、我が国の罹患3か月後のデータでも、同様の結果が報告されている。

 そのようにして遷延した、いわゆるpost COVID-19 ILDは、画像上、特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia: COP)との鑑別が極めて困難になることが多く、診断プロセス、治療についてのエビデンスはなく、COPに準ずる治療報告のみである。当院に受診された症例では、一時的に在宅酸素療法を導入せざるを得ない症例も認めたものの、大半が無治療で軽快し、3か月程度での自覚症状、陰影の消失を認めた。

 このような背景を考慮すると、今後予想される第6波以降では、早期診断、抗体カクテルあるいは経口薬による早期治療による肺病変進展をいかに防ぐかが、Post COVID-19 ILD進展防止のカギとなると考えられる。

 

ゆみのハートクリニック

臼井靖博

 

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